旅行期間が長期であったり海外に生活基盤を移す場合や、特殊な薬を持参する場合は、出入国を円滑にするために、また、現地で治療を継続するためにも英語で記載された文書を準備しましょう。
ネット上でよく見られるのは、
- 日本の主治医・薬局で依頼する文書の種類をきちんと伝えないために起こる混乱
- 日本の主治医・薬局が英文の文書を作り慣れていないために起こる混乱
- 規制対象である薬を知らずに証明書無しで持ち込んだために起こる混乱
- 持ち込む薬が大量すぎて、個人の使用ではなく、販売目的と誤解される
- 表記の何もない粉の処方薬の内容を説明できず、海外入国時に怪しい薬と誤解される
1)日本の主治医に誤解されないように依頼をする
医療従事者は、本来、患者さんが正しい用語を使わなくてもその意図をくみ取り、適した書類を作成すべきと思いますが、まだまだ機転を利かしてくれる医師・薬剤師は少ないようです。各国大使館の日本語の案内で「診断書と処方箋」と書いていることも散見されるため、患者さんも「先生、英語の処方箋を出してもらえませんか?」となるのですが、
これって、実は間違いです。
処方箋というのは医師が薬剤師・健康保険組合に対して薬の指示・内容を提示するものであって、薬局(または自身の医療機関)以外に持っていくものではありません。
医師または薬剤師にに処方内容を英文で書いてほしい場合は、処方箋という言葉を使わずに、海外で入国時や医療機関等で提示できる英文の文書が必要な旨、伝えるのが賢明です。
2)医師・薬剤師に英語の文書なんて書いたことが無いと拒絶されたら
上記同様、医師・薬剤師とも英語は学んでいるはずですし、世の中には記載見本のようなものもあるので、頑張って書いてほしいところですが、現実的に拒絶する人もいます。やり方は二つあります。 処方内容の証明だけが必要な場合は、ご自身で見本に従ってPC等で処方内容等を入力し、医師・薬剤師に内容の確認(承認)と署名を依頼するやり方が一つ。
(英文薬剤証明書を画像検索すると、参考になるひな形がたくさん見つかります)
ただし、この方法だと、さすがに診断書は難しいです。
そこで、もう一つ。
主治医に日本語の診断書を書いてもらい、それを有料で英訳してくれるところがあります。
こちらでは専属の医師が責任をもって英訳してくれ、単なる素人の翻訳ではありませんので、文書そのものにきちんとした効力があります。
旅の医学社
http://www.obm-med.co.jp/contents24.html#02
こちらでは英文診断書のほかに英文薬剤証明書や母子手帳の翻訳も作成してくれます。 http://www.obm-med.co.jp/contents23.html
http://www.obm-med.co.jp/contents17.html
3)規制対象の薬を持っていく場合
麻薬・注射は薬物犯罪防止の観点から、どこの国でも厳しく管理されています。日本においても麻薬・向精神薬(睡眠剤やある種の痛み止めなど)を国外に持ち出す場合は事前に各地方の厚生局長の許可を得る必要があります。
麻薬及び向精神薬の携帯輸出入許可申請についてhttps://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/matori/keitai.html
日本で麻薬として扱われている薬剤については処方箋や薬の受領の仕方が他の薬と異なるため、患者さん自身も把握されており、混乱は少ないと思いますが、向精神薬については一般の処方薬と区別されないため、病院・薬局での確認が必要です。
治療上、旅行中でも麻薬(がんの疼痛管理等)や注射(インスリンやインターフェロン等)を行う必要のある場合(他の代替薬が無い場合)は旅行中に必要な分だけであれば、基本的に認められますが、診断書や証明書が必要となります。
麻薬に関しては国によって規制対象となっている薬剤が異なるため、その国の在日大使館等に確認をお勧めします。
日本では普通の薬と同様に処方をされる睡眠薬や痛み止め、咳止め、下痢止めであっても麻薬として扱われるものもありますので、注意が必要です。
病院・薬局において、どの国で何の薬を規制対象にしているかは網羅できていませんので、心配な場合は各国大使館に尋ねるのが賢明です(特に睡眠薬・痛み止め)。
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4)薬を持ち込む量は最小限にとどめるべきです
どうしても日本にしかない薬を継続服用する必要がある場合は、きちんと英文の診断書を発行してもらいましょう。滞在が長期になる場合は、日本にしかないような特殊な薬ではないオーソドックスな代替薬を主治医に提案してもらい、現地で調達する方が出入国時のトラブルも少なく済みます。
実際に海外の都市部の薬局を訪ねると、思いのほか、日本で使われている薬は手に入る印象があります。
5)病院・薬局で分包した粉薬は要注意
おそらく、粉薬を粉のまま飲める国民は日本人と一部の中華系のみと思います。日本では小さな薬局でも粉薬を自動で封入する機械を持っていますが、海外では大病院でもほとんどありません。
そのくらい、レアなのだということを自覚した方が良いです。
薬の中身が説明できない場合は英文の処方証明を持参した方が賢明です。
粉薬に限らず、入国時に揉めないためには薬の外箱・処方薬の袋は捨てずにパッケージのまま持っていくのが望ましいです。海外で自分の服用している薬や病状、既往歴等を説明するのに使えるツール
くすりのしおり(英語版)http://www.rad-ar.or.jp/siori/english/index.html
もともとは日本の薬局で外国人の患者さん向けに薬の説明をするためのツールですが、薬品名、成分名、薬効等網羅されているので、日本人が海外に持っていくのにも便利です。
商品名の欄にカタカナで入力しても英語の説明書が表示されます。
安全カルテ
http://www.jstm.gr.jp/gakkai_karte.html
日本旅行医学会が作成した患者さん自身が自分で記録するノートです。
英語併記となっているので、そのまま海外に持っていくと、病院受診の際に情報がスムーズに伝達できます。
↓amazonでも販売されています。
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2 件のコメント:
まさに今 自分が探していた情報でした!
身体が人より弱い自分ですが、海外に長期滞在してみたいという夢があります。でも医療、薬の事が大きな壁になっていましたが 一つの壁を突破出来ました。良い情報をありがとうございます。
お役に立てて何よりです。
ご注意願いたいことが何点か。
制度上、処方日数に縛りの無い薬でも、実際は長期処方を嫌がる医療機関も多いです(日本)。
また、国によりますが大量の薬を持ち込むことは認められていないことも多いです。
(マレーシアやシンガポールは1か月分までです。薬を大量に持ち込むと、それを売りさばくのではないかと誤解を招きます。)
基本的には日本の主治医に現在の治療経過と服薬内容を文書として作成してもらい、現地の医師に治療を引き継いでもらうべきと思います。
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