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ジカ熱について 小頭症とギランバレー症候群

症状はデング熱より軽く、感染しても症状が現れないことが多いのに、なぜ、これほどに世界を震撼させるのか。



まず、ニュースで知られているとおり、妊婦の感染で小頭症の子供が生まれる可能性があることです。
ジカ熱と小頭症の因果関係は明らかになっていませんが、以前より、妊娠中のサイトメガロウィルス等への感染により胎盤を経由し胎児が感染し、少ない確率ですが小頭症となることが知られています。

サイトメガロウィルスは一般には不顕性感染(感染しても症状が出ない)で、多くの人が妊娠可能時期以前に自然と抗体を獲得していますが、妊娠中に初めて感染した場合(抗体が無い状態で感染)、高確率で胎児にウィルスが移行し、胎児への影響が大きいと言われています。

今回のジカ熱の小頭症への影響を考えるとき、その感染のメカニズムがサイトメガロウィルスと類似していると仮定すると、もっとも心配なのは世界中でジカウィルスに対する抗体をすでに獲得している人は非常に少なく、ほとんどの妊婦さんが初感染であるということ。
すなわち、胎児にウィルスが移行する確率が極めて高いということです。

次に、感染しても症状が現れる人が少ないため、感染が広範囲に拡大しやすいということです。
デング熱のように症状が出れば、活動を自粛したり、うつらないように気を付けたりでいますが、ジカ熱は無症状な人が多いため、気づかずに広範囲に移動したり、周囲の人と接したりすることで、今まで感染者がいなかった地域(免疫を獲得している人が少ない地域)で容易に感染が広がることになります。

そして、伝搬経路がデング熱と同じ種類の蚊であるということです。
つまり、デング熱の流行地域では高い確率でジカ熱の感染も起こりうることになります。
日本でも数年前にいままではあり得ないと思われていたデング熱の国内感染が騒動になりました。
世界中の国がデング熱を減らそうと蚊への対策に躍起になっていますが、蚊の活動が減少する冬のない地域では、大変苦戦を強いられています。

お隣シンガポールでも昨年はデング熱の抑え込みに比較的成功していましたが、12月頃よりデング熱の症例が増加し始め、今年に入って、近年同時期よりもかなり増加しています。
http://www.dengue.gov.sg/subject.asp?id=73


マレーシアでも同じ傾向で、この1月のデング熱症例数はここ数年の中で最も多くなっています。

デング熱患者数の推移2014、2015、2016(第三週1月23日まで) 
http://kpkesihatan.com/2016/01/28/terkini-situasi-denggi-2016-10482-kes-23-maut/

その中でもセランゴール州の一部地域、ジョホール州での患者数が突出していることがわかります。

2016年第3週の症例数


しかし、問題は妊婦さんだけのものではないのです。


ギランバレー症候群が、ジカ熱流行地域で増加する傾向となることが知られています(因果関係は不明)。
中米にあるエルサルバドルでは通常年間平均169人にギランバレー症候群を発症しますが、昨年12月1日から今年の1月6日までの約1か月に46人の患者が発症、うち2名が死亡しています。単純に計算すると、通常の4倍まで発症者が増えています。


ギランバレー症候群


病態など

聞きなれない病名ですが、免疫機構の暴走により自分の神経を攻撃し、全身の筋肉を動かす運動神経に障害が発生し、四肢の筋肉に力が入らなくなる病気です。
重症になると呼吸麻痺を生じ人工呼吸器や気管挿管が必要になり、場合によっては生死にかかわります。

現在、ギランバレー症候群発症は人口10万人に1~2人発症すると言われており、その原因は感染症や手術、予防接種等の後5日~3週間くらいで上記症状が出現します。
原因の事象が起こってから、発症までの期間が長いため、真の原因を突き止めるのが難しく、その全容は明らかになっていません。
ほとんどが何か月かかって治りますが、成人で30%、小児でそれ以上の割合で数年にわたり筋力が低下し、長期にわたるリハビリや装具の装着が必要となります。

治療

ギランバレー症候群は発症後3~4週間目に最も症状が重くなると言われているため、診断がつくと、入院(ICU)が必要になります。
発症から症状が重くなるまでの期間が長いため発症時に予後を予測することが難しく、後遺症を残さないために血漿交換療法または大量免疫グロブリン療法を行います。

血漿交換療法とは体内から血液を取り出し、フィルターにかけて原因物質を取り除き、また体内に戻す治療法で、いくつかある手法の中には濾過時に減少したアルブミンをアルブミン製剤(血液製剤)によって補うやり方もあります。
また、免疫グロブリン製剤は血液の中から精製された免疫を調節する成分で、同じく血液製剤です。

過去記事でも触れていますが、国内外問わず、
基本的に輸血・血液製剤の使用は可能な限り避けるべきと考えます。 

現在は多くの国でHIV・肝炎などの検査を行い、輸血や血液製剤の製造において安全に十分配慮していますが、現在分かっていない未知の病原体が含まれている可能性は否定できず、またごくまれに検査をすりぬけて既知の病原体が含まれてしまうことも実際に発生しています。

すなわち、ジカウィルスに感染することで、ICUを含む長期の入院(免疫グロブリン療法も血漿交換療法も高額です)、リハビリ、装具の装着、輸血リスクを一気に背負うことになります。

非常に稀な疾患ではありますが、感染者が増えればそれだけギランバレー症候群の発症者も増える可能性があるので、できるだけリスクを軽減するためにも防蚊対策をしっかりと行う必要があります。

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