先日の記事「微生物による食中毒とその対策について」
でふれたとおり、貝類は感染者(人間)の排泄物を濃縮し、ノロウィルス等を貯めこむ性質があるため、食べる際には加熱が必要です。
しかし、魚や貝には他にも怖い食中毒が存在しています。
いわゆるフグ毒、貝毒、シガテラ毒です。
有毒な成分を産生する藻を食べる貝に毒が溜まり、それを食べる魚に溜まるため、食物連鎖の上位にある肉食系の魚ほど高濃度に蓄積されています。
厄介なことに、これらの毒は加熱によって分解しないため、毒が一定量含まれた魚・貝を食べてしまうと食中毒をおこします。
また、魚・貝の鮮度と毒の含有量は関係が無く、においも無いため、外観からは毒の有無は判断できません。
どんな魚・貝に溜まるのか
貝(貝毒):草食性の2枚貝が主で、アサリ、ホタテ、ムラサキイガイ(ムール貝)、赤貝、カキなどが多く報告されています。中腸線(肝の一部)に溜まると言われており、除去可能な貝であればその部位を食べなければ、当たりません。また、草食性の貝を捕食する巻貝、カニでも毒があることがあります。
魚(シガテラ毒:南洋の魚に蓄積される毒全般):アオブダイ、オニカマス(バラクーダ)等が有名で、日本でも沖縄など、南洋で多く報告されています。
特に内臓部分に含まれており、稀に身にも含まれることがあります。
マレーシアでシガテラ毒を持っていると言われている魚の絵図は☟こちらのサイト☟が見やすいです。
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症状
共通:食事から発症までの時間が短いのが特徴
麻痺性貝毒(時によって致死性)
初期症状:唇のしびれしびれが唇から首、全身へと回ります。
重症では呼吸麻痺となり、命にかかわります。
※ヒスチジンを多く含む食べ物(鰹・マグロ・ブリ・鶏肉・ハム・チーズ・魚の干物)などを食べると付着した菌の繁殖により、ヒスタミンが作られ、ヒスタミン中毒になることがあります。
このヒスタミン中毒の初期症状は舌のピリピリ感で、食後早い時間で起こったり、無臭・加熱で分解されないなど、麻痺性貝毒と類似のエピソードが発生するため、鑑別が必要となることがあります。
下痢性貝毒
下痢・嘔吐細菌・ウィルスによる食中毒との違いは発熱が無いこと、発症までの時間が短いことが挙げられます。
3日くらいで改善します。
シガテラ毒
手足・口の感覚異常、運動失調、物に触るとドライアイスに触ったような感覚、下痢、腹痛、筋肉痛、関節痛など症状は長期化することもありますが、死亡例は稀。
治療
特別な解毒剤は存在しておらず、基本的には対症療法のみになります。毒が蓄積しやすい時期
有毒藻類が大量発生すると、それによる中毒も増加しますが、この大量発生(有害有毒藻類ブルーム(増殖):HABs)は日本では赤潮(毒性はなく漁業の妨げになる)が有名で、主に水温が上がる夏場に起こります。牡蠣がRのつかない時期に食べてはいけないと言われているのも有毒藻類が増殖する時期に藻類由来の中毒を防ぐための知恵です。
年中暑いマレーシアでも以前はモンスーンの影響で1~3月に起こりやすいとされてきましたが、昨今は海水温や環境変動により、時期が不特定となってきています。
Harmful Algae(英語論文)→Table2
https://www.researchgate.net/publication/251694422_Biology_ecology_and_bloom_dynamics_of_the_toxic_marine_dinoflagellate_Pyrodinium_bahamense
安全な魚・貝がほとんどですが、初期症状を見逃さず、早めに治療を受けましょう。
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