とりあえず、ワクチン!と言いたいところですが、日本国内でもマレーシアでも保険はきかないので、自費での接種になります。
また、ワクチンによっては国内では流通していなかったり、流通量が少なく外国から輸入された(日本で認可されていない)ワクチンを接種することになるため、そのリスクについて知っておく必要があります。
日本でもワクチンの副反応(ワクチンの場合、薬ではないので「副作用」と呼ばず、「副反応」と表現します)と思われる後遺症の残る事例も散見されており、その必要性については十分に吟味するに越したことはありません。
マレーシアで感染が懸念される感染症と必要なワクチンを考えてみたいと思います。
厚労省検疫所のホームページによると、マレーシア・シンガポールで懸念される感染症として、以下のようにまとめられています。
- 食事・水を介して感染する:A型肝炎、腸炎ビブリオ、赤痢、コレラ、腸チフス
- 蚊により媒介される:デング熱、チクングニア熱、日本脳炎(サラワク州で他州に比し多く散見される)、 マラリア(ボルネオ島の森林地帯)
- 川などで感染する:レストスピラ症、類鼻疽
これを踏まえ、推奨されるワクチンは症状の重篤度と感染機会等を考慮し、優先度の高い順に下記のとおりです。
- 破傷風
- B型肝炎
- A型肝炎
- 日本脳炎
- 腸チフス
- 狂犬病
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破傷風
これは海外に行く行かない関係なく大人になったら打っておいた方が良いワクチンです。破傷風菌は一般的な土壌の常在菌で、切り傷等から体内に侵入し発症します。
日本においても東日本大震災後や水害の復旧作業中などでも感染者が散見されていますし、地面に接触する大きなけがをした場合は発症を待たずにワクチン接種を行います。
小児期に三種混合ワクチン(DPT)として接種していますが、その効果は10年程度と言われており、小児期最後に接種した12歳以降接種歴のない方は10年に一度を目安に追加接種が望ましいです。
特に1968年以前生まれの場合は小児期に三種混合ワクチンを接種していないため、効果を持続させるためには3回接種が必要です。(1969~1973年生まれは移行期で接種漏れの可能性もあるので、母子手帳を確認する必要があります)
また、発症すると(傷によっては予防的に)抗破傷風ヒト免疫グロブリンを使用しますが、これは血液から抽出した成分(血液製剤)のため、輸血に準じたリスク を有しています。予防接種で発症をきちんと予防し、できれば血液製剤を使用しない環境にしておくことが望ましいと言えます。
B型肝炎
血液、体液を介して感染します。すなわち、一般的な生活・観光旅行では感染の機会は極めて低いと言えますが、万一感染→発症した場合の治療が長期化・高額となり、時には致死的となるため、感染後のことを考慮すると、長期滞在する場合は、ワクチン接種が望ましいと言えます。日常においては剃刀の刃の共有(床屋さんなど)、タトゥー、パートナーがB型肝炎キャリアの場合などは感染の可能性が高いです。
一方で、日本・マレーシアとも輸血や血液製剤に関してもB型肝炎ウィルスが含まれていないことを検査しており、病院において患者さんがB型肝炎に感染する事例はほとんどないと言われています(しかし、現実として可能性ゼロとは言い切れない ・・・)。
A型肝炎
B型・C型と異なり、感染しても慢性化することは少なく、特別な治療も行われないうえ、致死的になることもあまりないため、ワクチン接種の意義はそれほど高くないと言えますが、 回復までに1~2か月有するため、食事の衛生状態が良くないことが想定される場合は事前のワクチン接種が望ましいと言えます。日本脳炎
日本脳炎ウィルスを持っている豚から蚊を介して感染します。都市部のみに滞在する場合は不要と考えますが、レクレーション等で郊外に出かけた際などに養豚場に近づく場合は接種が望ましいです。感染すると意識障害や麻痺などの後遺症が残ることもあるため、ワクチン接種の意義は大きいです。
国立感染症研究所の2014年のデータで、30~35歳を境目に日本脳炎抗体価の低下(経年的な抗体価の減少と思われます)がみられており、これより高齢の場合は検討の余地が高いです。
腸チフス
最近(2015年8月以降)クアラルンプールで感染者が増加したことでマレーシア国内でも記憶に新しい感染症です。保菌者の糞尿を介して伝播するため、保菌者の手洗いが不十分な環境での調理により感染が広がります。
近年は一般的な抗菌薬で十分治療可能なため、発症後に適切な治療が受けられる環境であれば、ワクチン接種の必要性は低いと言えます。
日本では認可された腸チフスワクチンが無いため、日本国内で接種の際は外国から輸入された未承認ワクチンを使用することになります。
長期に海外に滞在する場合は現地にて接種を行うことを検討しても良いと思います。
狂犬病
最近(2015年9月)、タイとの国境付近のプルリス州、ケダ州、ペナン州で狂犬病の発症(犬への感染)しており、現地では本腰を入れて野犬、放浪犬の駆除を実施しています。これらの州においては自身の飼い犬の管理も厳格に行う必要があります。
また、狂犬病は犬だけでなく、他の動物も保菌していることがあるので、道端の犬や猫、野生動物に咬まれないよう、むやみに近づかない等の配慮が必要です。
狂犬病は発症すると100%死亡すると言われており、咬まれた後、速やかな処置(ワクチン接種や抗血清の注射)が大変重要です。
狂犬病の予防的ワクチン投与についてはその効果に賛否いろいろな意見があるのが現状です。
事前のワクチン接種により、咬まれた後の治療としてのワクチン接種までのタイムリミットが長くなると考える国と、事前のワクチン接種にかかわらず、速やかなワクチン接種が必要とする国が存在しています。
日本国内では狂犬病清浄国ゆえ、ワクチンの供給量が少なく、海外渡航者全体に対する接種は困難な状況であり、接種者の制限が行われている医療機関も存在しています。その場合は海外製の未承認ワクチンの接種を行うことになります。
追記:2017年7月、サラワク州、ペラ州に於いて、犬から人への感染が確認され、死亡例も出ています。
犬や猫、野生動物との接触には十分ご注意ください。
ワクチンの接種計画を立てましょう
ワクチンは種類によりますが、免疫を獲得するまでに複数回の接種を行う必要があったり、接種後効果を発揮するまでに日数が必要です。また、複数のワクチンの同時接種については可能な場合が多いですが、副反応が強く出たり、副反応がどのワクチンに起因するか 不明確になるため、できれば避けた方が良いと言われています。
ワクチン接種を行う場合は渡航予定等を考慮し、ゆとりを持った計画を立てる必要があります。
日本での未承認ワクチン接種について
国内認可ワクチンはその製法、添加物等について国内の基準に基づいて製造され、その安全性も確認されたうえで承認されています。一方、未承認輸入ワクチンは日本での審査が無く、それぞれの製造国の承認内容に従って製造されたものです。そのため、日本国内で予期せぬ重篤な副反応が発生した場合、国内認可ワクチンは予防接種法で定められた補償が受けられますが、未承認ワクチンにはそれはありません(一部、輸入業者が補償を行っています)。
補償の対象となるような重篤な副反応は非常にまれであり、世界での流通量の高い信頼性の担保されたワクチンを選択し、対象疾患に感染した場合のリスクを考慮した上で、接種を検討してください。
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